人権問題解決のために自分にできることを考えましょう
〜差別意識と偏見について考えてみましょう〜
天草郡市人権教育研究大会【就学前部会】研修
天草市民センター大会議室


 皆さん こんにちは。
 ただいまご紹介いただきました中川です。よろしくお願いします。これから皆さんと一緒に人権問題について考えていきたいと思います。
 いきなりですが、じゃんけんゲームをしたいと思います。5〜6人のグループに分けてありますのでグループでじゃんけんゲームをしてチャンピオンを決めたいと思います。チャンピオンを決め、チャンピオンの方には豪華賞品を用意していますので、きちんとしたルールを決めたいと思います。グループでじゃんけんをして、3回勝ったら手を挙げてください。1番早く手が上がった方がチャンピオンです。ベスト3まで手が上がったらそこでゲームは止めます。早く手が上がった方をチャンピオンとするのですから、「最初はグー、じゃんけんぽん」とすると勝敗を決めるのが遅くなります。ですから、いきなり「じゃんけんぽん」とした方が早い・・・・・そんなグループ内のルールはグループで決めればいいですよね。ルールは分かりましたか?
 あ、まだですよ。スタートは一緒にします。練習しなくてもいいですね?
 では、始めますよ。「よーい、始め!」
 1番、2番、3番。ベストスリーが決まりました。ゲームを止めてください。
 チャンピオンは、6班の○○さんでした。
 次のゲームは、3回負けたチャンピオンを決めます。このとき、「私がグーを出すから皆さんはパーを出して」などと取り決めをしてはいけませんよ。
 では、いいですか。「よーい、始め!」
 1番、2番、3番。ベストスリーが決まりました。ゲームを止めてください。
 やはり6班の方が早かったですね。△△さんがチャンピオンです。
 では、豪華賞品の贈呈式をします。チャンピオンになったお二人、前の方にお出でください。
 ○○さん おめでとうございます。賞品は、本日のレジュメにも記しています「熊本県人権同和政策課編 人権研修テキスト同和問題編」です。ホームページからダウンロードして印刷製本してきました。どうぞ、このテキストを元に同和問題についてさらなる自己研修を重ねてください。このテキストから一部引用していますが、皆さんもインターネットで検索し、同和問題について課題や自分にできることなどを研修してください。
 △△さん おめでとうございます。商品は、私が御船町の人権教育研修 課題別研修会で「ぬくもりのある学校」と題して講話しました記録です。自分で言うのもおかしいですが、好評だった講演の一つです。
 皆さん、お二人のチャンピオンをもう一度祝福してください。ありがとうございました。
 開会の言葉の頃は少し硬い表情だった皆さんの顔がじゃんけんゲームで少し和んできました。昭和の頃、同和問題研修は「3タ」ではいけないと言っていました。「3タ」とは、たてまえ、他人事、もう一つは、・・・・・・ ちょっと思い出せません。後で言います。(縦じわです。)同和問題を他人事として考えていては課題解決にはつながりません。また、建前で話し合っても真の解決にはなりません。本音で議論することが大事です。そこで、「あいうえおの人権教育」が出てきました。「あ」は明るい、「い」はいい話、「う」はうれしい、「え」は笑顔、「お」はおもいやりです。他人事ではなく我がごととして、建前ではなく本音で話し合い、人権課題解決をと、グループで話し合ったりする参加型研修が出てきました。本日は、本音で我がごとととらえ、人権問題を考えていきましょう。
 また、勝ちを決めるじゃんけんゲームと負けを決めるじゃんけんゲームではどちらの方が気合いが入りましたか?負けを決めるじゃんけんには余り気合いが入らなかったでしょう。私たちは物心が付いてこの方、じゃんけんは勝つ事を目指してきました。長年の生活の中で身についた考えの中に見直すものはないだろうかという観点から研修を進めたいと思います。
 始めに自己紹介をします。ただいま「中川ありとし」さんと紹介していただきました。私の名前は、「有紀」と書いて「ありとし」と読むのですが、「ありとし」と読む方はほとんどいません。ほとんど「ゆき」または「ゆうき」と読まれ、女性とよく間違われます。私はこの名前が大好きです。「有」は「保つ」という意味があります。「紀」は「年」という意味があります。そこで、「紀(年)を重ねて年相応の分別ができるような人間になれ」との願いを込めて父が付けてくれた名前です。父の願いに沿うようにと努力はしていますが、なかなか年相応の人間にはなれません。生涯、学習だと思っています。71歳になりましたが、今でも小学校や中学校時代の幼なじみからは「ありちゃん」と愛称でよばれています。私は「ありちゃん」と呼ばれることを嬉しく思っています。それで、「ありちゃん」を頭に付けた「ありちゃんのホームページ」をインターネット上に開いています。ところがほとんど見てはもらえませんので自分で見ています。今朝も開いてみました。「ありちゃんのホームページ」で検索すると、今日現在、ヤフーでもグーグルでもトップに出ています。時間にゆとりがあるとき、のぞいてみて下さい。先ほど豪華賞品としてお上げしました講演記録も私のホームページに載せております。
 大好きな名前ですが、私は小さい頃、上級生などから、「おっ、アリの来よる。アリば踏みつぶそう」と足で踏みつぶす仕草をしてからかわれたりいじめられることがありました。そんなとき、「俺はアリじゃなか。ありとし」と言って体当たりでぶつかって抗議していました。
 先生方が担任しておられる子どもの中に、名前のことでからかわれたり、意地悪されたりして悔しい思い、悲しい思いをしている子がいるかもしれません。そんなとき、みんなの前でその子の名前に込めた親御さんの思いを語って下さい。名前に込められた親御さんの願いや思いを知ったら、からかったり意地悪したりすることの愚かさにきっと気づくと思います。
 お子さんがいらっしゃる方、小さいお子さんだったら膝の上に抱っこして、背に手を回して、目を見つめて、お子さん誕生の時の感動、名前に込めた思いを語ってやって下さい。お子さんは自分の名前をこれまで以上に好きになり、誇りを持つと思います。自分の名前を好きになり誇りに思うことは、自分自身を好きになり誇りを持つことにつながります。これが自尊感情を育み、自分も周りの人も好きになることができる人に育つと思います。私はこのことが人権教育の礎であり、スタートだと思っています。
 先月26日(平成26年7月)、とてもショッキングな事件が起きましたね。佐世保市の高校生が同級生を殺害するという事件です。佐世保市では10年前、小学生による殺人事件が起きています。長崎県はもとより全国の幼稚園、保育園、学校で「命の大切さ」を実感する命の教育が推し進められています。しかし、心に届かなかった子がいたのです。この事件を他県の出来事、特異な出来事ととらえるか、自分の周りでも起きるかも知れないととらえるかで私たちの子どもへの接し方が変わってくると思います。このような出来事を我がごととしてとらえ、体験を通した命の教育を推し進めて欲しいと思います。
 ある幼稚園の先生からお聞きした話です。自由遊びの時間、子どもたちが砂場で池を作って遊んでいるとき、1匹のアリがその池に入り込んだそうです。しばらく見ていた子どもたちから「このアリを埋めようか」との声が出て、シャベルで埋めようとしたそうです。それを見ていた先生が「そんなこと止めなさい」と言おうとしたそのとき、一人の子が「かわいそう」と発したその言葉で子どもたちは我に返ったようにアリを埋めるのを止めたそうです。これは、まさに命に触れる体験ですよね。どうぞ先生方、このように命に触れる体験を子どもたちに数多く経験させてください。
 昨年3月の熊日夕刊に次のような記事がありました。


   差別根強い熊本 今も変わらず残念(熊日夕刊 平成25年3月29日 電話で話そう)

 私は四国の出身で、熊本に来て40年以上になりますが、同和問題やハンセン病問題など根強い差別体質が気になります。
 実は小学4年生の孫娘が先日、同級生から「あそこから先は同和地区だから行かない方がいい。付き合わない方がいい」と言われたというんです。熊本に来たころも差別が多いのに驚かされましたが、あまり変わっていないようです。いまだにハンセン病のことを何かと言う人もいますしね。
 私が育った県にもハンセン病療養所がありましたが、中学生のころにはもうそんな差別の話は聞きませんでした。私は菊池恵楓園に出入りして菊の育て方を習ったりもしました。
 少しずつでもいい方向にいってほしいと思います。


熊本県では、同和問題、ハンセン病問題、水俣病問題を3大人権課題として教育・啓発しているにもかかわらず、「あそこから先は同和地区だから行かない方がいい。付き合わない方がいい」と言われたというのです。子どもが言ったということは家族内でそんな話が出ていることです。もっともっと人々の心に届く人権教育・啓発活動をしていかねばならないと思いました。
 私は、人権問題を考えるとき、同和問題を重要な柱としてとらえ、水俣病問題、ハンセン病問題などさまざまな人権課題について考えることが大切だと思っています。
 本日は、時間も限られていろんな課題に触れる時間はありません。なぜこのような人権問題が起きたを見てみます。資料を準備していますので、課題解決にはどうすればよいかなど、後で目を通してください。 
 まず、同和問題について考えてみます。
 「あの人は同和地区出身だから…。」などと言われて結婚を妨げられたり、差別発言、差別落書きがされるなどの差別事件が依然として存在しています。
 部落差別の起源については、封建社会が確立されていく過程の中で、幕藩体制の強化・維持を目的として、当時の社会の中にあった偏見を利用して、政治的・人為的につくられた身分制度に由来しているといわれています。
 中世においては、人の死や血などは「穢(けがれ)」であるとする考え方が広まっていました。これは科学的・合理的に判断すれば、全く根拠のない誤った考え方ですが、この考え方から死や血などに触れると、触れた人も穢れるという考え方が形づくられ、やがて人や動物の死や血に触れる仕事をする人々は、その穢が感染し、穢れた存在であるという誤った考え方が社会の中に広まっていきました。この考え方が、偏見を形づくり、社会的に差別された身分を生み出すことにもつながりました。その後、江戸時代になり、徳川幕府によって、武士階級による幕藩体制を確かなものとするために、身分制度の強化し、多くの民衆を分裂させ支配する必要があったのです。当時の社会にあった偏見や、穢れ意識等の人々の誤った意識を利用して、武士や百姓、町人とは区別した、被差別身分とされた人々を固定化しました。これらの人々は、幕府によって、住む場所を生活環境条件の悪い場所に限定されたり、服装やほかの身分の人々との交際を制限されたりするなど差別的な扱いをされました。しかし、厳しく差別されながらも、農業を営んで年貢を納めたり、すぐれた技術を使って人々の生活に必要な用具をつくったり、治安を担ったりして、社会を支えました。しかし、民衆の生活が苦しくなり、幕藩体制に対する不満や不安が大きくなればなるほど、これらの人々に対する差別が強められていったという経緯があります。例えば、警備や刑の執行にかかわる役割や、一揆の探索や鎮圧に利用されて、民衆の反感の対象となるように仕組まれました。
 このように、現在同和地区と呼ばれる地域の多くは、近世初期の封建社会が確立されていく過程で成立したといわれています。
 これらの人の中には、古くから伝わる芸能をさかんにし、後の文化にも大きな影響をあたえました。農民の間に生まれた田楽や能楽として大成した観阿弥・世阿弥父子、庭師として銀閣寺や相国寺、興福寺の庭を造ったとされる善阿弥父子など、現在まで残る文化を形成した人たちが数多くいます。このように、当時差別された人たちが今日の伝統芸能や文化に果たした役割は大きいものがあるのです。
 同和問題に関し、 現在、 どのような人権問題が起きていると思いますか?
 いろんな調査から、結婚差別や就職差別を挙げている人が多くいるということがわかります。
 熊本県が平成16年に実施した調査では、結婚差別に関する実態は次のようになっています。
 保護者に対して、「子どもが同和地区の人と結婚するときどうしますか?」の問に対して、「子どもの意思を尊重する」と答えた人が63%です。この数字は、これまでの人権同和教育の成果だと思います。「親として反対するが、子どもの意志が強ければ仕方がない」と答えた人は30%。問題は、「家族や親戚の反対があれば結婚を認めない」と答えた人が4%、「絶対に結婚を認めない」が3%いることです。
 本人に対しての問です。「同和地区の人と結婚するとき周囲の反対があればどうしますか?」の問に、自分の意志を貫いて結婚すると答えた人が27%います。そして、親の説得に全力を傾けたのち、自分の意志を貫いて結婚するが54%、つまり80%強の人が結婚すると答えています。これもこれまでの教育・啓発の成果です。課題は、家族や親戚の反対があれば結婚しないと答えた人が15%、絶対に結婚しないが4%。反対があれば結婚しないと答えた人が20%弱いることです。まだまだ同和問題に対しての理解が十分ではないと言うことです。学校教育や社会教育の場で、参加型研修など工夫を凝らした教育啓発を続け、同和問題について、正しく学び、正しく理解し、正しい認識を持つようさらなる教育啓発が必要です。
 ハンセン病は、ライ菌により感染する感染症です。今の栄養状態では、まず感染することはないと言われています。明治時代、政府はハンセン病患者を一般社会から隔離する政策をとりました。患者を療養所に強制隔離したり、患者の家を消毒したりすることで、「ハンセン病は感染しやすい怖い病気」という誤った考えが広まりました。プロミンという治療薬が使用されるようになるまでは、発病すると病気が進行することが多く、不治の病と考えられていたことや、発病が一定の家族内に多く現れることから遺伝する病気と考えられていたことなどが人々の心の中にしみ込んでいたのです。
 熊本県ではハンセン病について正しい知識がなかったために起きた差別事件が二つあります。一つは、昭和28年、ハンセン病患者を親に持つ子どもが黒髪小学校に入学するのをPTAが拒否した事件です。保護者は、ハンセン病患者を親に持つ子どもと机を並べて勉強するなら我が子にハンセン病が移るかも知れない、そんなことは絶対避けねばならないとの思いからの入学拒否事件です。ハンセン病を正しく理解していたなら、こんな差別事件は起こらなかったはずです。もう一つは、平成15年、阿蘇黒川温泉にあるホテルがハンセン病元患者の宿泊を拒否した事件です。先ほどから言っていますように熊本県では、ハンセン病に関する教育・啓発を進めている中で起きた事件です。県民の心に届く教育啓発の必要性を認識したところです。
 水俣病は公害病ですよね。窒素水俣工場からの廃液に含まれた有機水銀を摂取した魚介類を日常的に食べたことが原因となって発生した中毒症です。公害病です。しかし、昭和30年代、発病した人や家族は何が原因で病気になったかが分からず、地域住民から大変な差別扱いを受けました。家に向かって石を投げつけられたり、就職や結婚の際に差別を受けました。公害と分かってからもこのようなことが続き、水俣病に関する教育・啓発を続けてきました。そんな中に、4年ほど前、サッカーの試合中に、「水俣病、触るな」との中学生の差別発言がありました。試合の接触プレー中に、一人の生徒が発言したのです。これを機に、水俣病に関する表面的な知識を教えるのではなく水俣病を正しく理解する教育・啓発が続けられています。
 こららの人権問題に共通することは、正しく理解していなかったがために起きた差別です。正しく理解することの大切さを私たちに教えてくれました。
 人権課題解決のためには、人権問題を正しく学び、正しく理解し、相手の立場に立って判断し、行動に移すこと、そして、日常生活の中にある差別につながる意識や態度を見直し、「ほんとかな?」と立ち止まって見直す態度を身につけることだと思います。
 これからは参加型学習で自分の意識や態度を振り返り、人権課題解決に向けて自分にできることを考えてもらいたいと思います。
 皆さんはこれまで何度か参加型学習を経験されたことと思いますが、これから進める参加型学習のルールを説明します。
 まずは、皆さんに積極的に参加していただきたいと思います。
 皆さんが発言されたことを否定するような発言はお止めください。
 発言はこの研修の場限りのものです。外に持ち帰って「あの人はこう言った」などはお止めください。
 もし、話し合いの途中で、人権研修は不要などの意見が出た場合は、挙手してください。みんなで考えたいと思います。
 ルールはおわかりでしょうか。
 それでは、自己紹介をした後で、進行係、記録係、発表係を決めてください。
 決まったら、今から約40分間、「それってホント?」を元に次のようなことを話し合ってください。Aへ移ってくださいなどの指示はしませんので進行係の方が時計を見ながら進行してください。
 @「固定的な見方」や「決めつけ」をキーワードに、自分のエピソードを思い出し、そのことを出し合いましょう。
 A「固定的な見方」や「決めつけ」がどうして良くないのか話し合いましょう。
 B「固定的な見方」や「決めつけ」により、悲しい思いやいやな思いをしないために私にできることを話し合いましょう。
 グループごとに付箋紙、広用紙、マジックが配ってあります。グループでご自由にお使いください。
 まずは、教材文を読んでの自分の思いを付箋紙にまとめた後で付箋紙を広用紙に貼るなどして皆さんに示しながら話し合いを進めてください。
 グループでの話し合いが終わったところで、グループで話し合ったことを発表し、聞き合いたいと思います。
 進め方について、ご質問はありませんか?
 では、話し合いをどうぞ。


                      それってホント?

イヌ:やあネコさん、お久しぶり。
ネコ:(少し元気がない様子)
イヌ:ネコさん、なんか元気がないみたいだけど、どうしたの?
ネコ:イヌさんはいいよねー。3日飼ったら主人のことを忘れないほど恩深くて、芸も覚えて賢いってみ   んなから言われてるもんね。それに比べてネコなんか、気まぐれで飼い主のことを裏切るとか、    見かけは穏やかでも内心は違うと思われたり、あげくのはては死んだらばけて出るなんて思わ    れたりして、いいことなんて全然ないもんね。
イヌ:確かにそんなことを言われることもあるけど、全部のイヌがそうだとは思わないよ。それよりネコ    さんは、高いところから落ちても足から落ちてけがしないんでしょ。
ネコ:そんなふうに思われているところもあるけど、でもそれで高いところから落とされてひどい目に遭   った友だちもいるんだよ。
イヌ:イヌだ、ネコだということで、みんな一緒に見られてしまっているところがあるよね。
ネコ:ほんと、ほんと。全く迷惑な話だよ。みんな一緒に見るんじゃなくて、もっと、一匹一匹のことをち   ゃんと見て欲しいよね。
イヌ:同感だね。ところで、ネコさんの血液型は何型?
ネコ:そんなこと、見たら分かるでしょ
イヌ:どれどれ、分かった、B型でしょ。
ネコ:ちがう、ちがう。まじめで、慎重に行動するA型よ。
イヌ:えー。ネコさんがA型? マイペースで計画性がないB型かと思ったよ。
ネコ:そりゃーひどいね。そういうイヌさんは何型?
イヌ:見たら分かるでしょ。
ネコ:うーん。分かった。O型でしょ。
イヌ:ちがう、ちがう。器用で多趣味なAB型よ。
ネコ:うそー。細かいことを気にせず、負けず嫌いなイヌさんは、てっきりO型かと思った   よ。
イヌ:なんか笑っちゃうよね。やれA型だの、B型だのと血液型でみんな同じ性格みたいに見られると   ころがあるけど、他にもそんなことってあるのかなあ。
イヌ、ネコ:どうですか?皆さんには、私たちと同じような経験はありませんか?

時間が来ました。まだ話し合いを続けておられるところもあるでしょうが、こらからグループで出たことを発表してください。一つ一つの発表についての私のコメントは控えさせてください。
 (5つの班に発表してもらう)
 ありがとうございました。発表の中に「固定観念をそうかな」と考え直すことが大切というのがありました。 
 10年ほど前の毎日新聞に「黒いランドセル」という記事が掲載されました。
 ある小学校に一人の女の子が入学しました。女の子は黒いランドセルを背負って登校して来たそうです。教室でも学校の行き帰りでもたくさんの子から冷やかされました。「女の子は赤のランドセルだろう。黒のランドセルは男の子だろう」と。担任の先生は、子どもたちに精いっぱい説明をしますが、子どもたちになかなかうまく届きません。女の子はとうとう学校へ行けなくなりました。保護者は悩んだ末、学校を変わりました。
 転校先の学校でも、「おかしい」の声が上がりました。担任の先生は保護者に、「黒いランドセルを背負って登校するのは、きっとわけがあると思います。よかったら黒いランドセルのわけを教えて下さいませんか。」と尋ねました。家の人は先生にアルバムを見せながらそのわけを話しました。「この子には3歳上の兄がいました。黒いランドセルを背負って小学校に入学しましたが、ランドセルを背負って学校へ行ったのは1日だけでした。兄は、小児ガンにおかされていました。2回目のランドセルを背負うことなく、この世を去ってしまいました。この子が入学するとき、『新しいランドセルを買おうよ』と家族はすすめましたが、『私は、お兄ちゃんの黒いランドセル背負って学校へ行く。大好きなお兄ちゃんと一緒に学校へ行く』と強く望みました。それで、私たちもこの子の言うことを見守っていたのです。」と。
 担任の先生は、この話を学校の先生方に話し、学校をあげて、この問題に取り組み、女の子は、胸をはって黒いランドセルを背負って学校へ行けるようになったということです。
これこそ「○○=○○」という固定観念のおかしさですね。固定観念のおかしさは、いろんな場で叫ばれています。黒いランドセルは男の子のランドセル、女の子のランドセルは赤いランドセル、何の科学的根拠のないものがやがて社会通念としてできあがることはおかしなことです。私たちは、ややもすると固定観念でものを見てしまいがちです。固定観念でものを見ることのおかしさを訴えていきたいものです。
 それから発表の中に、ご自分のお子さんのことについての発表がありました。「あなたがいたから学級みんなが成長することができた」という言葉を担任の先生からもらったとありました。
 大阪教育大学の園田雅春先生の講演記録で次のような話を読んだことがあります。
 人権集会で6年生のAさんが、「とても気にしている私の肌の色が黒いことを言われて、学校に行くことができなくなるくらいつらい。」と涙を流しながら訴えたそうです。
 シーンとした会場で、子どもたちから、「これから絶対、言わないから、ごめんなさい。」「冗談のつもりでした。許して下さい。」「軽いつもりでいてたけどれも、こんなに深く悲しんでいるということを、初めて知りました。これから言わないから、許して下さい。」など謝りの言葉が次々に出たそうです。もう出尽くしたかなと思っていると、一番前に座っていた1年生の女の子が、立ち上がって、「Aねえちゃんは、色が黒いのがよう似合う。」と言ったそうです。他の子どもたちは、Aさんの肌の色が黒いことを彼女の欠点だと思っているのです。だから、「ごめんなさい」と謝りました。Aさんもそう思い、気にしていました。しかし、1年生の子は、Aねえちゃんのお肌の色は欠点という認識がありません。大好きなAねえちゃんの肌の色が白かったら、大好きなAねえちゃんではなくなってしまうわけです。それで、「Aねえちゃんは、色が黒いのがよう似合う。」の言葉が出たのだと園田先生は言っておられます。そして、Aさんが、「この1年生は自分を丸ごと大事にしてくれている。」と思ったとき、Aさんが抱く感情が核心的自尊感情だと言っておられます。 発表していただいた方のお子さんも担任の先生の言葉で核心的自尊感情を実感されたことでしょう。
 まとめに入ります。
 私たちは、あらゆるものの情報を五感で感じ取って脳に取り込み、それを過去の記憶や体験を通じて勝手に自分に都合よく、概念化・観念化していきます。このような中で、情報や人を通して得た話、うわさ話を鵜呑みにし、偏った見方、イヌとネコの会話に出てくるようなことをしていることはないでしょうか。
 『無知は偏見を生み、偏見は差別を生む」とも言われています。先入観や思い込みによって、人をひとくくりに判断するのではなく、その「人」自身を理解し、認め合う事が大切です。
 意識から差別への行動へ向かう心の仕組みは、そこに図示していますように、思い込みが固定観念となります。固定観念のことをステレオタイプとも表現します。これにマイナスイメージが加わると、偏見となり、この偏見が時として差別心を生むのです。
 また、物事に対して知らない部分に、誰かが間違った情報を伝えると、それを正しいことと受け止め間違った理解をしてしまいがちです。これにマイナスイメージが加わり偏見が生まれるのです。
 最初に考えました同和問題もハンセン病問題も水俣病問題も決めつけや無知から生まれたものです。
 ですから正しく学び、正しく理解することが大切なのです。
 終わりに、桑原律さんの「人権感覚」って何ですかという詩をみんなで朗読して終わりたいと思います。
 黙読してください。
 では、一緒に読みましょうか。


      「人権感覚」って何ですか   桑原 律

「人権感覚」って何ですか  それはケガをして  苦しんでいる人があれば
そのまますどおりしないで  「だいじょうぶですか」と  助け励ます心のこと

「人権感覚」って何ですか  それは悲しみに  うち沈んでいる人があれば
見て見ぬふりをしないで  「いっしょに考えましょう」と  共に語らう心のこと

「人権感覚」って何ですか  それは偏見と差別に  思い悩んでいる人があれば
わが事のように感じて  「そんなことは許せない」と  自ら進んで行動すること

「人権感覚」って何ですか  それはすどおりしない心  見て見ぬふりをしない心
他者の苦悩をわが苦悩として  人権尊重のために行動する心のこと
                      (ヒューマンシンフォニー 光は風の中にから)

 ありがとうございました。
 先生方が子どもたちに寄り添う保育活動で、豊かな感性を身につけた子どもたちが育ちますことを祈念して終わりにします。
 ありがとうございました。



                                  参加者感想

・人権と聞くと少し堅苦しいなと、ここに来るまでは思っていたけど、研修を受けるにつれてそういう思いはなくなった。これからのことにいろいろ生かしていけるところもあった。

・普段の自身の言葉・行動を改めて考えると、偏見になる部分もあり、反省する点があった。

・講師の先生の親しみやすいお人柄も感じられ、人権教育について考える時間が持て良かった。園での研修に生かし共通理解したい。

・たくさん考えさせられました。良い勉強になりました。何事もよく知ることが大切ですね。知ろうとする意識を持とうと思いました。

・講師の先生が、福沢諭吉のような(会ったことはありませんが)方であったかくなりました。

・決めつけや固定観念がまだまだある世の中、保育士として心の優しい人格を育てていきたい。

・改めて考えさせられる問題があるといろいろ思いました。

・とてもわかりやすい人権教育だった。自分で正しい理解をしていけるよう今後も学んでいきたい。

・もう少し人権について具体的な話ももっと聞いてみたいと思いました。

・中川先生のこれからのご活躍を祈念いたします。グループでの先生方と出会いがあり、とても勉強になりました。

・自分自身の決め付けや固定観念について振り返ることができました。

・人権問題を正しく理解したいと思いました。

・よかった。偏見差別をしないようにしたいと思った。

・先生からの「物事は正しく学んで正しく理解して、相手の立場に立って実施実践、行動する」という言葉をしっかりと保育の中に活かせるよう、帰って職員に伝えたいと思います。ありがとうございました。

・とても心のこもった中川さんの講演で、心に響きました。

・同和問題のことや水俣病のことは知っていましたが、ハンセン病のことは知りませんでした。今回の研修でハンセン病もよく分からない理解違いから起こった問題と分かりました。正しく学び正しく理解して判断して実行しなければと思いました。

・いろいろな事例や対応策等が聞けてよかった。自分自身の振り返りができた。

・人権問題について改めて考えることができよかった。ありがとうございました。

・人間としての生き方を学べたと思います。これからいろんな気持を感じ取りながら、みんなが明るく過ごせるよう自分も努力していきたいと思います。

・思い込・偏見・差別について十分に学ぶことができた。自分の生活を振り返り、今後も人権感覚を磨きたい。

・グループ討議でとても勉強になりました。

・自分の偏見から相手のすべてを決め付けがちです。全てを見直す機会となりました。

・演習もあり、他の先生方の意見も聞くことができ、充実した時間だった。

・楽しく学べました。

・固定観念が偏見そして差別を生む連鎖を正しい認識で断つことを学べてよかったです。

・人権、被害者でもあり加害者でもあると気付かされた。

・参加型ということで、初めは緊張しましたが、楽しい研修となり、いろいろな考えを聞くことができ、勉強になりました。

・参加型研修で役に立った。

・少し偏見を持って過ごしているところがあるので、心がけていきたい。

・人権=同和問題・いじめと思っていたのですが、いろいろと根があることを知りました。正しい理解で受け止めていきたいです。

・差別や偏見など自分ではしているつもりはなかったものの、話し合うことで気づくことも多かったです。意識を変えねばと思いました。

・人を思いやることの大切さを学んだ。

・勉強になった。

・自分の中での固定観念があることに気づかされた。「人権教育」について身近に感じ、考え方・物の見方を正していきたいと思った。

・難しく感じず、自分の体験の中から理解できたこと。

・内容(講話・グループ討議)はよかったが、発表することがあることで十分な話し合いができにくかった。

・グループ討議、時間がなくて残念でした。

・グループワークが研修の主流になっているが、今回は講演にもっと時間を取ってほしかった。